不法就労取締強化の背景と制度利用者への影響
近年、入国管理局及び労働基準監督機関による不法就労の取締が強化されています。かつての「事実上の黙認」から「厳格な執行」へ政策転換が進む中、技能実習制度・育成就労制度・特定技能制度を利用する受入企業や監理団体においては、法令遵守の徹底が競争力の鍵となります。
技能実習法第3条は「適正な実施」を監理団体に義務づけ、同法第7条では受入企業に対して「技能実習生の保護」を規定しています。また出入国管理及び難民認定法第19条の2は、不法就労助長罪として「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」を科す重大な犯罪です。この規定は監理団体・受入企業の経営層にも適用される可能性があります。
育成就労制度(令和6年4月施行)においても、適正な雇用契約・労働条件の整備は基本要件です。「黙認」時代の慣行的運用は通用しなくなったと認識する必要があります。
監理団体・受入企業が対応すべき三つの柱
第一に「体制整備」です。コンプライアンス委員会の設置、定期的な法令研修、受け入れ前の厳格な身元確認が必須です。第二に「記録管理」です。在留資格確認(パスポート・在留カード原本確認)、雇用契約書の整備、給与・就労時間の適正記録が重要です。第三に「通報体制」です。違法な同業者を知った場合の報告義務化や、外国人材からの相談受付体制の構築が求められます。
さくら中央法務事務所(在留資格専門)では、技能実習・育成就労・特定技能制度における法令遵守体制の構築支援を専門としており、監理団体・受入企業の皆様のご相談をお受けしております。
「黙認」と「厳格化」の分岐点
厳格化の象徴は、以下の三点です。①労働基準監督機関との連携強化により、最低賃金・残業代未払い案件が徹底的に摘発される、②入国管理局による定期的な実地視察が増加する、③違反企業の「ブラックリスト化」により、以後の制度利用が不可能になる、です。制度利用者にとっては、短期的な「コスト削減」よりも「長期的な信用維持」が経営判断の中核となります。
【実務上の影響】厳格化により、技能実習生・育成就労者・特定技能者の受け入れ基準が実質的に引き上げられています。監理団体は年1回以上の実地視察に加え、監視体制の更新が求められ、受入企業はコンプライアンス研修の実施と記録保管が競争要件になります。違法行為が発覚した場合、制度全体からの排除や罰金納付だけでなく、取引先喪失や社会的信用低下も招きます。
【注意すべき落とし穴】最も見落とされやすいのは「最低賃金の通勤手当・食事代への算入」です。多くの受入企業が「生活支援費」名目で給与から控除していますが、労働基準法第27条の解釈により違法とされるケースが増加しています。また、在留カード確認を「初回のみ」で済ませ、更新時に不確認のまま就労継続させる事例も当局の指摘対象です。「以前はこうしていた」という運用慣行は通用しません。
【今すぐすべきアクション】①全受入企業に対し、現在の給与体系・労働条件を法的観点から監査し、不適切な控除がないか確認する、②在留カード確認の複写・管理システムをデジタル化し、監査対応可能な体制に移行する、③監理団体は受け入れ前研修に「不法就労の法的リスク」をカリキュラムに追加し、外国人材本人にも理解させる。これらは3ヶ月以内の着手が推奨されます。