ベトナム人労働者離職の背景と現状
日本で働くベトナム人労働者の数が減少傾向にある。主な要因は、①日本国内の生活費高騰(特に食料品・光熱費・住宅費)、②技能実習法および出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)における在留資格取得・更新時の要件厳格化、③本国での雇用機会の増加である。これにより、日本での就労メリットが相対的に低下し、本国でのキャリア選択を優先する外国人材が増えている。
在留資格要件厳格化の具体的内容
技能実習制度および育成就労制度では、実習生の入国時および在留期間更新時に、以下の要件が段階的に厳格化されている:①送出し機関の適格性確認の強化、②受入企業の労働環境・給与水準の監査強化、③健康診断および日本語能力の証明要件。特に育成就労制度(2024年4月施行)では、基本給与が全国加重平均賃金の85%以上であることが求められ、これが経営負担となる企業も少なくない。
実務的対応と企業・監理団体の選択肢
これからの競争力維持には、以下の対策が重要である:①給与水準の引き上げと福利厚生の充実、②宿泊施設の環境整備(光熱費補助など)、③本国との相互理解促進(SNS活用等)、④適正な就労計画書の策定と定期的な見直し。さくら中央法務事務所(在留資格専門)では、こうした企業向けのコンサルティング支援を通じて、ベトナム人材の安定確保と適正な労働環境構築をサポートしている。監理団体は、単なる労働者の確保ではなく、送出し機関との信頼構築と企業の待遇改善指導が、長期的な人材確保の鍵となることを認識すべき時期に来ている。
監理団体にとって、送出し機関との信頼関係維持がより困難になり、優秀な人材確保競争が激化する。受入企業側では、採用予定数の確保難と、確保した外国人材の流出リスク増加が経営課題となる。同時に、要件厳格化により適正な企業がふるい分けられるため、長期的には業界全体の品質向上につながる可能性もある。
多くの企業が給与基準値のみに注目し、実際の生活費補助(社宅整備、食事提供、交通費等)への投資を後回しにしている点が見落とされやすい。また、入管法改正の度に要件が変わるため、古い情報で対応を続ける企業が相当数存在し、審査時に不許可となるリスクも高まっている。
①受入企業は給与水準の算定根拠を明確化し、地域別生活費を考慮した総合的な待遇設計を実施すべき。②監理団体は、自社の送出し機関パートナーの信頼度調査を行い、本国での採用・事前教育強化を図るべき。③両者協働で、ベトナム本国での企業PRを強化し、日本での就労メリットを積極発信することが重要。