令和6年の入管法等改正法により、「永住者」の在留資格の取消事由として、入管法に規定する義務を遵守しないこと、故意に公租公課の支払をしないこと(入管法第22条の4第1項第8号)、特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたこと(同項第9号)が追加された。
出入国在留管理庁は、予見可能性と処分の公平性の確保などを目的に、令和8年10月1日付で取消しに関するガイドラインを策定した。取消事由に該当しても、「引き続き本邦に在留することが適当でない」と認める場合を除き、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格への変更を許可する(職権変更。
入管法第22条の6)。ほとんどの場合は「定住者」への変更を想定しており、職権変更後に永住許可の要件を満たせば、再度永住許可を受けることも可能とされている。国または地方公共団体の職員は、取消事由に該当すると思料する外国人を知ったときは入管庁に通報することができ(入管法第62条の2)、通報は義務ではない。
入管法上の義務については、在留カードの携帯・提示義務や、在留カードの偽変造・行使等をしない義務などが対象となる。病気や災害などの「正当な理由」がある場合は該当しない。在留カードの更新を失念した場合や不注意で携帯しなかった場合も取消事由には該当するが、その一度の不履行だけをもって取り消すことは想定していないとされる。
取り消す例としては、繰り返しの指導にもかかわらず在留カードの携帯・提示や更新をしない場合や、偽造在留カードを行使しようとした場合などが挙げられている。公租公課とは、所得税、住民税、公的医療保険料、公的年金保険料などをいい、手数料・利用料や罰金・過料は含まれない。
「故意に公租公課の支払をしないこと」は、収入や資金・財産の状況、滞納回数・滞納額・滞納期間、支払状況、滞納に至る経緯などを総合考慮し、公租公課の支払意思がないことが明白と認められる場合が該当すると考えられ、滞納額等について一律の基準は定めていない。
該当すると想定される例は、滞納が長期間に及び地方公共団体への届出なく転居して所在が不明になっている場合、繰り返しの催告・滞納処分を行ってもなお納付する意思を明らかにしない場合、分納や猶予の約束の期限までの納付を繰り返ししない場合、脱税等で有罪判決を受けた場合、滞納処分を免れる目的で財産の隠蔽等を行った場合である。
該当しないと想定される例としては、病気、災害、失業などのやむを得ない事情により支払ができない場合(事業不振、感染症や災害等による収入変動、DV被害による生活困難、職場でのハラスメントを原因とする離職など)、催告等に応じて支払う意思を示し分納や猶予措置を受けている場合、生活保護に準じた措置を受けている場合、給与から公租公課が控除されているのに所属企業が納付していない場合が挙げられている。
特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたことは、刑期の長短を問わず、拘禁刑の執行が猶予された場合も含まれる。対象は、刑法の窃盗・詐欺・恐喝・殺人・傷害などの罪や危険運転致死傷など一定の罪(故意犯)に限られる。この罪で拘禁刑に処せられた永住者は、刑の執行が猶予されても、初犯であれば職権変更とすることが想定される。
永住許可後(改正法の施行前を含む)に拘禁刑前科があり、さらに同号の刑罰法令で拘禁刑に処せられた場合などは、取消相当となる。家族関係や人道上の配慮の必要性がある場合は、取消相当でも職権変更とする場合があるとされている。実務上の注意点として、ガイドラインは、在留カードの更新を失念した場合や不注意で携帯しなかった場合の一度の不履行だけで取り消すことは想定していない一方、繰り返しの指導にもかかわらず携帯・提示や更新をしない場合は取消しを想定している。
公租公課については、催告等に応じて支払う意思を示し分納や猶予措置を受けている場合は支払意思がないとは認められない例とされ、分納や猶予の約束の期限までの納付を繰り返ししない場合は該当する例とされている。給与から公租公課が控除されているのに所属企業が納付していない場合は該当しないと想定される(ガイドラインの記載)。
